「optimal 404」について
本作品は3Dプリンターのエラー材によって分断される空間のインスタレーション作品である。
情報技術の進歩によって、新たなメディアから形成されるエラーを音楽におけるノイズ、映像におけるグリッチと考えると、3Dプリンターによるエラー材は、ものづくりや建築において新たな価値を提示する可能性がある。
それを背景に私は、設計者の手によって描かれる建築計画図面における線を3Dプリンターに描かせ、専門家ではない人でも空間作り/建築設計が可能であると考えた。
概要
現代ではデジタル技術の進歩から建築における設計者と施工者の境界が曖昧になり、専門家ではない人たちも建築を設計し施工することができるようになりつつある。そこで15世紀の印刷技術の発明による建築設計、具体的には原作者→表記法→施工という建築過程への影響を参考に、現代的な印刷技術である 3Dプリンターと現代における建築過程の関係を捉える試みとして本作品を制作した。
本作品は、専門家ではない人たちも建築を設計し施工することができるという考えのもとから、3Dプリンターを利用した空間設計の前段となる補助線(基準線) を、インスタレーションとして表現した。本作品から建築と3Dプリンターの新たな関係性を探っていきたい。
アルベルティによる計画図の定義
印刷技術の発明によって、現代で未だに利用されている建築計画図は代著的な表記法における建築計画図としてアルベルティに定義された。私はこの建築ができるまでの関係を「建築の型」と考え、さらに以下のリファレンスを用いて、「現代の型」を思考した。
・Growing architecture like plants
・INDUCTION DESIGN-Ⅷ
・ICD/ITKE Research Pavilion 2015
・Dutch startup MX3D to 3D print steel bridge in Amsterdam
さらに「現代の型」から「建築の型」を「旧来の型」としてそれぞれを比較した。「旧来の型」では、設計者/施工者の境界を計画図が繋いでいたが、現代では設計者/施工者の境界をデータがつなぎ、専門家ではない人でも設計し施工することができるようになりつつある。
3Dプリンターと建築の関係性
ここで建築に多大な影響を与えた印刷技術に着目し、新たな印刷技術である3Dプリンターが現代の型への影響を本作品で再考する。
3Dプリンターは専門家ではない人でも一定のクオリティで即時的に3Dデータを3Dプリントすることができ、ものづくりにおける作り手と使い手の境界を曖昧にしたデジタルファブリケーションツールの一つである。
また、建築の分野における3Dプリンターの活用例として模型のプロトタイピングまたは、先行事例で示した施工があげられ、誰でもより大きな造形をプリントできるようになることが予想できる。
仮説
私は3Dプリンターによって専門家ではない人でも即時的に物をつくる事ができるだけでなく、専門家ではない人でも即時的に空間を作ることができると仮説を立てた。
手法
「optimal 404」
本作品は3Dプリンターのエラー材によって切断される空間におけるインスタレーションである。
情報技術の進歩によって生まれるメディアから形成されるエラーを音楽におけるノイズ、映像におけるグリッチと考えると、3Dプリンターによるエラー材は、ものづくりや建築において新たな価値を提示する可能性がある。
(3Dプリンターのエラー材による空間づくり/空間設計は3Dプリンターの性能を最大限に生かした最適な設計手法とも言える。)
それを背景に私は3Dプリンターの特徴を踏まえ「現代の方」との関係を思考したうえで、専門家ではない人でも空間づくり/空間設計が可能であると考えた。
参考文献
・アルファベット そして アルゴリズム: 表記法による建築――ルネサンスからデジタル革命へ
マリオ カルポ (著), Mario Carpo (原著), 美濃部 幸郎 (翻訳)