ニュートンが運動とその原因となる力の関係を、数式に変換して示したのはよくご存知かと思います。木から落ちるリンゴを目にして、引力に気づいたという逸話すらあるくらいです。
このようにニュートンをはじめ現在に至るまでに、様々な数学者が数多くの現象を数学的に示してきました。つまり物理世界における多くの現象を、数式的に考えることが可能になったのです。そして現代ではコンピュータによって、より複雑な現象もシミュレートできるようになっています。
このように数式による現象の解明は、現代の情報化を大きく助けてきました。そしてそれは数式を高速に扱うことが可能なコンピュータの開発とともに、物理空間における現象の解明・シミュレーション・コントロールを共存することすら可能にしました。現象のコントロールとして、ローレンス・レッシグが『CODE VERSION 2.0』で述べた、飲食チェーン店の空調の調整や椅子の固さを居心地の悪い環境にすることで、客の回転率をあげる行動管理が代表例と言えるでしょう。
この環境管理を前提とすると、裏側で様々なシステムが動き続けることで人の動きをコントロールできることは想像ができます。しかし、それ自体を見ることはできません。
そこで本作ではコントロールの対象と数式を組み合わせて展示します。17世紀のスイスの数学者 ヤコブ・ベルヌーイが再帰的な曲線として示したベルヌーイの螺旋アルゴリズムを利用してアンモナイトを模倣した造形を出力し、それをコントロールの対象としています。また307フレームまでシミュレーションを行い、その断片として、4つの造形を配置しています。
物理的に存在する物であっても、その背景には様々なシステムが存在する可能性があります。
本作では、その裏側にあるシステムを把握し、コントロールのためのシステムとその対象となる物や人間の動きの関係について再考することを目指します。