PolygonType 2D


Abstract

写真撮影は、日常的に多くの人によって行われる。食事をするときや素敵な景色を前にしたとき、友人と遊ぶとき、さらには上手に化粧ができたときや好みの洋服を着たときに撮影する自撮りなども含まれる。これらはスマートフォンなどのカメラが搭載された小型デバイスで撮影・加工・編集が一括で行れ、instagramなどのメディアに共有される。こうした写真撮影は、デジタル写真が元となって登場した。
 デジタル技術における写真撮影は、従来の写真フィルムなどの感光材料をもとに記録する写真を拡張させた。それが示されたのはphotoshopなどのソフトウェアによる編集が前提とされた写真作品から確認することができる。ルーカス・ブレイロックは撮影をした写真をデジタルデータとして扱い、photoshopなどのソフトウェアで過剰な加工の痕跡を残す手法を用いて、新たな写真表現を提示した。これは写真を現実の状況や物理的記録としてだけでなく、イメージセンサーから読み込まれたデータとそこに施された処理の結果であり、写真がデジタルデータに移り変わったことによる写真概念の拡張の一例とも言えるだろう。ただし編集・処理という点では、写真術の発明から程なくして生まれたネガポジ式の写真技法カロタイプから前例があり、ネガ原板自体の編集から、曲面鏡などによって像を直接操作するエフェクトまで行われていた。これを前提としてデジタルデータとして扱う現代の写真表現をみると、イメージセンサーに読み込まれた後のデータ編集における表現はあるものの、イメージセンサーに読み込まれる以前の編集は万華鏡などを例としたミラーの利用に限られている。
 そこで本作品では、原板と版の関係性を背景に、イメージセンサーにデータとして読み込まれる像に焦点を当て、それを外部のソフトウェアを利用して編集することで写真表現の拡張を試みる。具体的にはフルカラー出力の可能な高精度3Dプリンターで出力する造形をイメージセンサーの手前に配置し、像の編集を行う。印刷技術としての3Dプリンタは、3Dデータの物理的な表れとして出力される。3Dデータは、3Dスキャナーを用いて物理的なものを3Dデータ化する方法から、ソフトウェアを利用した3Dモデリング、または3Dデータ制作のためのアルゴリズムを設計することで、パラメーターによる可変の容易なシステムを構築することができる。このように3Dプリンタの出力に至るまでに必ず3Dデータを介すことから、その3Dデータを制作する3Dモデリングソフトウェアによって像の編集が行われることを意味する。このデジタル写真装置とは異なるソフトウェアにおける像の編集という点において、写真の新たな表現手法として確立する可能性を秘めている。


fig.1 PolygonType 2D 展示風景