Archi-Tekton


Abstract

本作品はストリートスケートボーディングをモチーフとして建築の概念の再考を目指したインスタレーション型の映像作品である。作品制作において、アンリ・ルフェーヴル 『空間の生産』 イアン・ボーデン 『スケートボーディング・空間・都市』 ティム・インゴルド 『ラインズ -線の文化史-』を参照することで、建築の概念について再考し、ストリートスケートボーディングを本作品における建築の概念として提示する。そこではスケーターは建築家であり、動き続けるスケーターの軌跡は新たな動線(line)を描き出すと仮説を立てたうえで、アマチュアスケーターである作者自身のリサーチ(街でのスケートボーディングの実践)をもとにに、壁によって区切られた空間内に再構成した。約1500個のLEDによる動きと8つのスピーカーにおける立体音響の動きを同期させることでスケーターの像を表現し、想定できない動線からみる空間生成を体感することができる空間を創り出した。本作品において、空間を捉える手段の一つである「建築」について再考するとともに、根源的な人と空間の関係性について鑑賞者に示唆することを目指す。


This work is an installation work type video work aiming to reconsider the concept of architecture with the motif of street skateboarding.
In the production of the work, I referred to Henri Lefebvre ‘The Production of Space’ , Iain Borden ‘Skateboarding and the City’ , Tim Ingold “Lines -Cultural History of the Line-” was referenced.
Therefore, I present the creation of space by the street skateboard as a concept of architecture of this work.
Introduction It is assumed that the skater is an architect and the trajectory of the movement of the skater generates a new flow line
Based on the research of the artist himself, which is an amateur skater (practice of skateboarding in town), I reconstructed it in the exhibition space.
Represent an image of a skater by synchronizing the movement of approximately 1500 LEDs and the movement of sound by eight speakers
We created a space where we can feel the space generation seen from the unexpected flow line.
I make that space a concept of architecture.
In this work, we will reconsider about “architecture” which is one of means to capture space and aim to suggest viewers about the relationship between fundamental people and space.

作品リファレンスとして, Richard Long: Walking The Line (fig.2) があり、Longの歩く痕跡における道という空間の生成を、現代のスケートボーディングによる空間の生成と同等の意味として位置づけている。


fig.1 スケートボーディングによる空間生成



fig.2 Richard Long: Walking The Line



fig.3 スケートボードにセンサをつけ動きを情報化するリサーチ


作品詳細

本作品内のスケートボーディングの動きは、リサーチとして実践し収集したデータを用いて本作の構成をした。
音響は8個のスピーカーを利用し、鑑賞者を中心とする立方体の頂点にスピーカーを配置し、立体的な音響空間を構成した。そのうえでスケートボーディングの動きを音と光を同期することで表現し、「既存の展示空間」に対する「新たな身体」によって生成される空間をLEDの配置によって設計した。
本作品はインスタレーション型の映像作品としており、 3分間の時間軸の中でスケートボーディングによる空間生成の一連を体感することができる。スケートボーディングを始めてから空間生成に至るまでの過程を「閉じられた場所での空間生成」「郊外での空間生成」「都市での空間生成」の三つに分けて構成し、スケートボーダーの空間生成を再解釈することでそれを建築として設計し、時間的・空間的な条件のもと作品とした。


fig.2 -設計図面- 三分間のタイムライン構成図

fig.3 タイムラインにおける空間生成の変遷

fig.4 一, 閉じられた空間でのスケートボーディング

fig.5 二, 屋外において想定される空間

fig.6 詳細図面, 屋外での空間生成における要素

fig.7 三, 都市において想定される空間

fig.8 詳細図面, 都市での空間生成における要素


参考文献

The Production of Space  著:Henri Lefebvre (1992,4)
Skateboarding, space and the city  著:Iain Borden (2006,8)
ラインズ -線の文化史- 著:ティム・インゴルド (2014,6)
Richard Long: Walking The Line  著:Richard Long (2005,7)